2度目のオリンピック

 地元の県立高校で空手道部に入って以来、途中ブランクがあったものの、空手を習い続けています。明治学院大学を受験した理由も、社会学を学びたかったことに加え、空手道部が私の道場とおなじ流派だったからでした。
 卒業後、空手道専門の月刊誌「JKFan」編集部に就職し、本年1月より編集部長になりました。一方、2015年より世界空手連盟という空手の国際競技団体に出向し、事務をしています。

 大学3年生当時、必修ではなかったためにゼミを履修しなかったものの、渡辺雅子教授の「専門書購読」という授業でフィールドワークの楽しさを知り、4年次に3年生ゼミを履修し、後輩に混じって調査や論文製作をしたものです。奇しくも、「資料を集める」「先攻研究を調べる」「仮説を立てる」「調査のアポイントを取る」「調査し、結果をまとめる」「論文という作品を作る」という一連のプロセスが、雑誌編集者という仕事でそのまま役に立ちました。大学で学んだことを社会で活かせる喜びを感じられたのは、幸運だったと思います。

 2015年から2016年にかけては、2020年東京オリンピックの「追加種目」選考審査があり、空手界を挙げた猛烈なキャンペーンに関わりました。既報の通り、悲願のオリンピック種目化が初めて実現しました。実は1970年に空手の第1回世界大会が日本武道館で行なわれているのですが、そのちょうど半世紀後に、再び日本武道館で実施されることになったのです。

 1964年の東京オリンピックを実際にご覧になった先輩方は、時代の高揚をどのように記憶されているでしょうか? そして2度目の東京オリンピックは、どのようなレガシーを遺すのでしょうか。スポーツが、つねにフェアネスを巡る葛藤を抱えていることは事実です。しかしながら、オリンピックという肉体と精神を極めたアスリートが全身全霊をぶつけあう舞台は、感動をもたらすことと確信しています。その種目の一つとして、空手競技の成功に全力を尽くします。

 最後に一言、目標宣言を。最近、大学の講義にゲストスピーカーとして呼んでいただき、学生のみなさんに実務経験をお話しています。オリンピックという目下最大の目標に向かい、そしてその後も豊かな生き方をしたいなと先輩方の背中を追いかける傍ら、限りない可能性を持つ同窓の現役学生たちへ、将来の道を選択するヒントを示せる人間になりたいと願う次第です。

小日向 藍菜
(2007年社会学科卒)