流行に乗れなかった私

私は、愛好会の落語研究会に所属していました。今も時々、寄席に行き、若き日の自分の足跡を確かめることがあります。演芸ホールの座席は老若男女が埋め尽くし、昨今の落語ブームを実感しています。
 私が大学へ入学したのは昭和60年(1985年)、世の中はバブルに沸き、学生たちはDCブランドに身を包み、テニスをやってもやらなくても、とりあえずレノマの大判の肩掛けバッグにラケットを入れておしゃれなカフェへ。当時、学内には沢山のテニスサークルがありました。サークル名が横文字で書かれた色とりどりのスタジアムジャンパーの団体が集まる学食に部外者は近づきにくい場所でした。
 そんな時代でしたから、落研に入る学生はかなり貴重な存在です。全学年で10人程度、少数精鋭のサークルでした。
幸いにもその後、廃部になることはなく、現在も活動を続けており、落語ブームのおかげか定かではありませんが、全学年20名~30名が所属しているようで、男女比も半々ぐらいと聞いています。
 30年前の私は冒頭のテニスサークルの華やかさに憧れながらも、ラケットを握ったこともない自分がそこへ入る勇気もなく、サークル活動日には他の部員とともに教室の壁に向かってひたすら稽古していました。活動が終わると飲みに街へ繰り出します。店へ行く前に、水曜日は戸塚駅(自分は戸塚1期生です)、土曜日は目黒駅の伝言板に飲み屋の名前を書いたのも懐かしい思い出です。
    こんな小規模サークルでしたが、日ごろの成果を発表する落語会には、愛好会の他のサークルの面々が会場いっぱいになるほど駆けつけてくれて、本当に有難かったです。
 落語研究会は今年で創部53年目を迎えます。この間、節目に周年行事を開き、世代を超えた交流が図られています。私自身、落研に籍を置いたことで、卒業後30年経った今でも同窓の方たちと繋がることができ、母校にも足を運ぶ機会があり、大変良かったと思っています。これからもこの繋がりを大切にしていきたいと思っています。
 
      土田征敏(1989年 法律学科卒)